妊娠中のタバコやお酒、カフェインの摂取はどんな影響があるの?
タバコやお酒、コーヒー・紅茶などのカフェイン飲料…。これらの嗜好品は、妊娠中の摂取は避けた方が良いといわれています。
しかし、「お腹の赤ちゃんに良くないから」ということは知っていても、具体的にどのような悪影響を及ぼすのかを知っている人は少ないのでは?
妊娠前に上記の嗜好品を日常的に楽しんでいた方にとって、妊娠・授乳中である約2年間に摂取しないのは、なかなかつらいことです。でも、悪影響の内容を知ると、きっと「頑張って我慢しよう!」と思いますよ!
今回は、妊娠中のタバコやお酒、カフェインの影響についてご紹介します。
有害物質が250種以上!母子の命を縮める「タバコ」
厚生労働省の「最新たばこ情報」によると、タバコ本体から3,044種類、タバコの煙から3,996種類の化学物質を分離できた、と報告されています。また、主流煙と副流煙に含まれる化学物質のうち、有害物質が250種類以上、発がん性物質も50種類以上あるといわれています。
まさに「危険の塊」であるタバコですが、何よりも恐ろしいのは、強い依存性があること。タバコの中に含まれているニコチンが身体的・心理的依存を生み出すため、喫煙者は「やめたくてもやめられない」状態に陥ります。実際、妊娠前から喫煙習慣があるプレママの中には、胎児への悪影響を知っていながら禁煙できずに悩んでいる方が多いのです。
では、お腹の赤ちゃんへの悪影響とは、具体的にどのようなことでしょうか?
低体重児・流産・早産・胎盤早期剥離などを発生させる
タバコに含まれる有害物質の中でも特に問題なのが、ニコチンと一酸化炭素。
ニコチンは血管を収縮させて、母体内の血流を悪くします。そして一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと結合する性質がありますが、もともとヘモグロビンは酸素と結合すべきものであり、一酸化炭素を摂取してしまうと母体内の血液中の酸素が不足状態になるのです。
その結果、子宮や胎盤の血液循環が悪化して子宮収縮が発生したり、胎盤機能が低下したりする事態に。流産・早産・前置胎盤・胎盤早期剥離などの危険性が高まります。また、赤ちゃんに必要な栄養や酸素が届かず、発育を妨げて低体重児になる場合があります。
生後、乳幼児突然死症候群やぜんそく、肺炎などを引き起こす
喫煙は赤ちゃん誕生後も影響があります。生後、赤ちゃんが突然亡くなってしまう「乳幼児突然死症候群」は、妊娠中や産後の喫煙で発生リスクが高まります。また、家族などによる受動喫煙(非喫煙者が喫煙者のタバコの煙を吸わされること)で、赤ちゃんがぜんそくや肺炎、慢性呼吸疾患になりやすくなります。
以上が、喫煙による赤ちゃんへの弊害です。「タバコは百害あって一利なし」、大切な赤ちゃんとこれからの新生活のためにも、妊娠を機に喫煙から卒業しましょう!
摂取時期や量により危険が大きくなる「お酒」
日常的にお酒を嗜む女性は、妊娠発覚時に焦ることが多いようです。なぜなら、妊娠超初期は自覚症状に気付きにくいため、計画妊娠でもない限り普段どおりに飲酒しているパターンが大半だからです。では、妊娠に気付く前の飲酒は、お腹の赤ちゃんにどのような影響を与えるのでしょうか?
実は、妊娠0~4週未満の妊娠超初期段階では、赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。この時期は胎盤ができる前なので、血液を通して母体からアルコールが赤ちゃんに届くことはないからです。ただし、妊娠に気付く時期が遅ければ、当然アルコールが赤ちゃんに送られてしまいます。妊娠の自覚症状がなくても、「そろそろ…」と考えている場合は、普段の飲酒も量を控えめにした方が安心できるでしょう。では、妊娠発覚後の飲酒はどうでしょうか?
答えは「悪影響がある」です。以下が、その危険性です。
胎児性アルコール症候群(FAS)になる可能性がある
妊娠中の女性がお酒を習慣的に飲み続けると、お腹の赤ちゃんは「胎児性アルコール症候群」と呼ばれる先天性疾患を発生する可能性が出てきます。お腹の中での成長が遅くなり、低体重・低身長になるほか、学習や発達面での知能障害、形態異常、脳性小児まひ、行動障害などが表れる可能性も。胎児性アルコール症候群は、妊娠・授乳時期にママが飲酒をしなければ100%防げます。
お酒の大量摂取は自然流産・死産を招くことも
妊娠前から常にたくさんお酒を飲んでいた女性は要注意です。もし、妊娠後も同じようにアルコールを摂取していると、自然流産や死産になる恐れがあります。お腹の赤ちゃんの命を守るためにも、お酒から離れる努力を。
以上が、飲酒による赤ちゃんへの弊害です。専門家によっては「ストレス解消として、ワインは1日1杯、ビールなら350ml程度までなら飲んでも大丈夫」といった見解を示す人もいますが、頻繁に積み重ねれば「毒」となります。きっぱりやめられない場合は、かかりつけの医師や助産師に相談してみるなどして、自己責任で選択しましょう。
「カフェイン」のとり過ぎは栄養素排出の原因に
コーヒー、紅茶、緑茶など、毎日当たり前のように飲むカフェイン飲料も、妊娠中は控えるべき物になります。また、実はコーラやココア、チョコレートなどにも、カフェインは含まれています。
カフェインは中枢神経を興奮させ、多く摂取すると不眠や頻脈、精神の興奮を引き起こします。
カフェインは母体だけでなく、胎盤を通してお腹の赤ちゃんにも届いてしまいますが、赤ちゃんの肝臓が未熟なためにカフェインを排出しきれず、体内に長く残ることも。すると結果的に、赤ちゃんの体に負担をかけます。
以下はカフェインによる赤ちゃんへの悪影響です。
母体から過度にカルシウムを排出し、鉄分吸収を妨げる
カフェインのとり過ぎは、ママの尿から排出されるカルシウムの量を増やし、鉄分の吸収を妨げます。せっかくお腹の赤ちゃんのために栄養をとっても、無駄になってしまうのです。
流産や早産、低体重児・発達障害を指摘する研究結果も
ママのカフェイン大量摂取により、お腹の赤ちゃんが流産・早産・低体重児・発達障害になる可能性を指摘する研究結果があります。
以上が、カフェインによる弊害といわれています。カフェインによる赤ちゃんへの影響はまだはっきりしていないこともありますが、摂取には気遣いが必要でしょう。
カフェインはタバコやお酒に比べると緩く、産科の指導も「過剰摂取を控えるように」と指導するところが多いようです。一般的には「1日にコーヒー1~2杯(150~200mg)程度なら問題なし」といわれています。
おわりに
お腹に新しい命が宿ると、女性には「我が子を守る」という重大な責任が生まれます。タバコ、お酒、カフェイン類は、ストレス解消やくつろぎの一時に大きな役割を果たしますが、母親になったその日からは「赤ちゃん第一」で!我慢するのは、長い人生の中で一時期です。妊娠中は赤ちゃんへの影響を考えて、後悔のない妊娠生活を過ごしましょう。